HOT TO RUN FASTER

さらに速く走るために

第8回

リレーではバトンパスが勝敗をわける

春の運動会シーズンが到来しました。最近では、秋の運動会は熱中症の危険性が高いということで、春(5月頃)に運動会を実施する地域や学校が多いとお聞きします。皆さんの学校ではどうでしょうか。

さて、運動会前には、走るのが速いお友達はリレーの代表選手として選ばれると思います。このコラムを読んでくださっているご家庭のお子さんも、瞬足で見事、リレーの選手に選ばれたのかもしれませんね。今回はリレーで勝つための秘訣をお話します。

皆さんは北京オリンピックで日本代表チームが見事銅メダルを獲得したのは覚えているでしょうか。優勝したのは世界記録保持者のボルト選手がメンバーのジャマイカでしたが、日本チームは強豪のアメリカなどを抑えて、トリニダード・トバゴに続いての三位でした。一位や二位のチームをはじめ、欧米や中南米のチームには100メートルを9秒台で走り短距離走の個人種目でも決勝に残るような選手たちが揃っていました。一方、日本チームは4人全員が10秒台であり、4人の合計タイムでは他国にとてもかなわないはずなのに、見事に三位でした。(*優勝したジャマイカチームが後にドーピング違反となったために、日本チームは銀メダルに繰り上がりました)

このような日本チームの活躍は、日本チームがオリンピック本番に向けてバトンパスの練習を集中的に、何度も繰り返した結果でした。一方、ジャマイカと並んで優勝候補とされていたアメリカは、決勝においてバトンパスに失敗、そしてイギリスは予選においてバトンパスに失敗して敗退していました。特にアメリカの場合には、メンバーが集まる時間があまりとれなかったという事情もあり、バトンパスはオリンピック直前になってから練習を始めたということが知られています。

このことから、どんなに走るのが速くても、バトンパスでミスをしてしまうと、リレーのタイムや順位は遅くなってしまうこと、そして走るのは遅くても、バトンパスをうまく出来れば走りではかなわないようなクラスやチームにも勝つことができるということが分かります。

日本チームの秘密兵器はアンダーパスと呼ばれる特殊なパスの方法でした。このパスは、通常の走りと同じように腕を振りながら、一瞬の間に腰の辺りでバトンをパスする方法で、成功させるには大人でも相当な練習が必要です。小学生の運動会では、通常のパス(オーバーハンドパス)で十分ですが、バトンパスを成功させるにはバトンのもらい手(後走者)の絶妙なリードと、渡し手(前走者)の大きな声で“ハイ”と叫ぶ合図をすること、そして貰い手を抜かすくらいの意識でバトンを渡しに行くことが重要となってきます。この時に二人が走るスピードを緩めることなくバトンパスできれば、他チームとの少しくらいの走力差はつめることが出来ますし、さらに差を広げることも可能です。本番までに何度も練習して成功させましょう。

それから、小学校のリレーの場合、直線部分はパドンパスに使ってしまいますから、コーナーでスピードを落とさずに走る能力がいつも以上に重要になってきます。だから、リレーこそが瞬足のチカラを発揮する時です。